■ 最近の論文総説より

哺乳類の脳形成過程における
typeII classic cadherin 遺伝子の発現様式の解析の
論文です。


Takahashi & Osumi, BMC Dev. Biol., 2008

Expression study of cadherin 7 and cadherin 20 in the embryonic and adult rat central nervous system.

ラットの胎児期から成体脳におけるcad7および cad20 遺伝子の発現様式の報告です。これらの遺伝子は初期脳の特異的な区画や境界に発現しており、生後脳では、一連の小脳前核ニューロンに発現することが明らかとなった。

神経新生と学習、記憶に学習についての
総説です。

Clinical Neuroscience、2008
学習

前川さんのFABP7遺伝子についての
総説です。

分子神経医学、2008
FABP7 遺伝子

哺乳類全胚培養胚への遺伝子導入法の
総説です。

Takahashi et al., Dev. Growth Differ., 2008
Transferring genes into cultured mammalian embryos by electroporation.
これまでに大隅研究室で行ってきた、げっ歯類の全胚培養法と電気穿孔法による遺伝子導入法についての総説です。本総説の前半では全胚培養法の詳細が紹介され、後半では遺伝子導入法について、神経分化や細胞移動などの神経発生学研究への応用例が紹介されています。

大隅先生が筆頭著者の
総説が出版されました!


Osumi et al., Stem Cells, 2008
Pax6 Transcription Factor Contributes to Both Embryonic and Adult Neurogenesis as Multifunctional Regulator.
転写制御因子Pax6についての総説です。発生過程か生後のニューロン新生まで、Pax6が果たす多様な機能や、様々な標的遺伝子についてまとめられています。


表紙になりました!
学生の櫻井くん(現博士研究員)の論文です!
Sakurai and Osumi, J.Neurosci.,2008
The Neurogenesis-Controlling Factor, Pax6, Inhibits Proliferation and Promotes Maturation in Murine Astrocytes
これまで神経分化を促進する因子として知られていた転写制御因子Pax6が、大脳皮質のアストロサイトにおいても発現することを見出しました。Pax6突然変異マウスにおいて、アストロサイトは未分化な状態にあることがわかり、細胞増殖能および細胞運動性も亢進していることがわかりました。これらの結果から、Pax6はアストロサイトにおいて、増殖を抑制し、成熟させる新規の機能を有することがわかりました。

詳細はこちらです(プレス発表)。

松本さんの総説が
掲載されました!

BRAIN and NERVE, 2008
脳発生におけるPax6の機能と
その異常

野村さんの総説が
掲載されました!

BRAIN and NERVE, 2008
発生進化学的視点からみた大脳皮質の多様性の獲得機構

若松先生の総説が
掲載されました!

細胞工学、2008
神経堤細胞のEMTの制御

須藤さんの総説が
掲載されました!
蛋白質核酸酵素増刊、2008

セマフォリン/プレキシンシグナルによる海馬線維の層特異的投射の制御機構


高橋さんの総説が
掲載されました!

蛋白質核酸酵素増刊、2008

脳の領域化- 特異的遺伝子発現とコンパートメント・境界形成の制御機構

野村さんの論文が
掲載されました!
Nomura et al. PloS ONE、 2008
Patterns of Neurogenesis and Amplitude of Reelin Expression Are Essential for Making a Mammalian-Type Cortex.

哺乳類と鳥類における終脳の形成の違いを生み出すメカニズムの報告です。

原さんの総説が
掲載されました
実験医学、2007

ニューロン新生におけるPax6の機能

Watanabe et al. PLoS Biology 2007 Fabp7 Maps to a Quantitative Trait Locus for a Schizophrenia Endophenotype.

理化学研究所吉川先生との共同研究の論文です。Fabp7という不飽和脂肪酸の代謝に関与するタンパク質の遺伝子が、統合失調症の発症の原因であることを示唆した報告です。

詳細はこちらです(プレス発表)。


表紙になりました!
野村さんの総説です。
Nomura et al., Develop. Growth Differ. 2007

Role of a transcription factor Pax6 in the developing vertebrate olfactory system.


嗅球発生におけるPax6の役割について、新しいデータを含む総説です。Pax6変異胚では嗅球が形成されない(写真右上)。


学生の玉井くんが筆頭著者の論文です
Tamai et al., Genes to Cells, 2007

Pax6 transcription factor is required for the interkinetic nuclearmovement of neuroepithelial cells


ラット大脳皮質原基のスライス培養下におけるタイムラプス観察(左図)により、神経上皮細胞の細胞周期依存的核運動(エレベーター運動)および中心体の局在性を Pax6が制御することを明らかにしました。左図において、緑は中心体、赤は神経上皮細胞の形を示す。Pax6 変異胚では中心体の脳室面側への局在化が正常に起こらない(経時的変化を白矢印で示している)。


若松先生の論文が掲載されました!

Wakamatsu et al.,
Development, 2007

Transitin, Nestin-like intermediate filament protein, mediates cortical localization and lateral transport of Numb in mitotic avian neuroepithelial cells.


トリ神経上皮細胞の非対称分裂時に不等分配されるNumbタ ンパク質をアンカーする分子として、中間径フィラメント 分子Transitinを同定しました。また、Numb-Transitin複合体がM期に基底膜側から側方に輸送されることを示しました。写真はTransitin(緑)がM期(後期)に片側の娘細胞に 分配されている様子を示しています。マゼンタは中心体の γ-チューブリンを、青は染色体を示しています。

Long, J. E et al.,
Journal of Neurosci. 2007
Dlx-Dependent and -Independent Regulation of Olfactory Bulb Interneuron Differentiation

嗅球介在ニューロンの分化に関する共同研究の論文です。


学生の鈴木くんが筆頭著者の論文です

Suzuki et al., Develop. Growth. Differ. 2006
Sox genes regulate type 2 collagen expression in avian neural crest cells.

2型コラーゲンをコードする遺伝子Col2a1が神経堤で発現しており(写真矢頭)、それがSoxEファミリー転写因子によって制御されていることを示しました。


学生の金久保さんが筆頭著者の論文です
Kanakubo et al., Gene to Cells, 2006
Abnormal migration and distribution of neural crest cells in Pax6 heterozygous mutant eye, a model for human eye diseases.

マウス胚における頭部神経堤細胞の移動経路を、P0-CreマウスとreporterマウスによるCre-LoxP systemにより解析しました。Pax6変異ヘテロ胚において、神経堤の移動に異常があることが明らかになりました(LacZで標識された神経堤細胞は手前で止まり(黒矢印)、先に進めない(白矢印))。また、Pax6変異ヘテロ胚における眼形成異常と神経堤細胞の移動との関わりについて詳細に解析しました。


酒井さんの論文が掲載されました!
Sakai et al., Development, 2006
Cooperative action of Sox9, Snail2, and PKA signaling in early neural crest development.

神経板外殖体にSox9の発現ベクターをGFP(緑)とともに導入し、培養した。アクチン骨格の形態(ピンク)からわかるように、細胞の脱上皮化が誘導され、培養皿上を遊走しているのが観察される。青はDAPIによる核染色。


野村さんの論文が掲載されました!
Nomura et al., Development, 2006
Pax6-dependent boundary defines alignment of migrating olfactory cortex neurons via the repulsive activity of ephrin-A5.

胎生期の終脳背側から腹側へと移動する神経細胞に着目し、この神経細胞の移動様式の決定にPax6遺伝子が関与していることを発見しました。Pax6は 細胞膜分子ephrin-A5 の発現を制御することにより、この神経細胞を将来の嗅皮質にとどめておく機能をもつことが明らかとなりました。


学生の新井さんが筆頭著者の論文です
Arai et al., J Neurosci. 2005
Role of Fabp7, a downstream gene of Pax6, in the maintenance of neuroepithelial cells during early embryonic development of the rat cortex.

マイクロアレイ法によって、Pax6によって制御される標的遺伝子、Fabp7を同定しました。Fabp7の発現パターンはPax6と非常に類似しており(写真左)、Pax6変異ホモ胚において発現が消失していました(写真右)。RNAi法と哺乳類全胚培養系によってFabp7の機能を抑制すると神経分化が促進されたことから、Fabp7はPax6の制御下で神経上皮細胞の未分化性の維持に寄与していると考えれられます。
■ 詳細はこちらへ(プレス発表)


酒井さんの論文が掲載されました!
Sakai et al., Dev Growth Differ. 2005
Regulation of Slug transcription in embryonic ectoderm by beta-catenin-Lef/Tcf and BMP-Smad signaling.

鳥類神経堤の形成のメカニズムを明らかにするため、神経堤細胞に特異的に発現するSlug遺伝子の発現調節領域の解析を行いました。転写開始点の上流にはWntシグナルのeffector分子であるTcfとBMPシグナルのeffector分子であるSmadの結合配列が存在しており、両者の協調的な作用により神経堤におけるSlugの遺伝子の発現が制御されていることを示しました。


表紙になりました!
学生の前川さんが筆頭著者の論文です
Maekawa et al., Genes Cells, 2005
Pax6 is required for production and maintenance of progenitor cells in postnatal hippocampal neurogenesis.

胎生期の神経上皮細胞や成体海馬の歯状回にも発現するPax6に注目し、生後の神経新生におけるPax6の役割について解析しました。Pax6ヘテロ変異胚の海馬歯状回ではGFAP陽性細胞の早期神経前駆細胞が減少しており、BrdU陽性細胞の数が減少していることを見い出しました。これらのことからPax6は神経前駆細胞の維持と分化の方向性の決定に関与していると考えられます。

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