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勝山グループ

神経解剖学、組織学的研究

哺乳類の大脳皮質には興奮性ニューロンの分布から、６層構造が観察されます。この層構造の詳細や領域ごとの違いについて地味に観察を行っています。大脳皮質のNissl染色像を観察すると、神経細胞の形や大きさ、分布や密度などの違いによって軟膜（pia）側から白質(WM)の間にいくつかの層が観察されます。これを細胞構築(cytoarchitecture)と言います。Brodmannはヒトやその他の哺乳類の大脳皮質の細胞構築を比較することによって進化的に保存された領野に分けることができることを提唱しました(Brodmannの脳地図)。生理学的研究から各領域は大脳皮質の特定の機能と対応していることが示されており、例えば、Brodmann４野は一次運動野、17野は一次視覚野であることが分かっています。一方で、今日マウスを用いた大脳皮質の研究者は多くの場合、Paxinosらによって書かれたアトラスを参考にしていますが、アトラスにおける領野分けについて十分な記載はありません。我々は分子発現と古典的な組織染色を組み合わせて、大脳皮質の組織学的に詳細な記載を行い、そのような領野の特徴が、どのようにして発生してくるかを調べています（高橋、2012年日本神経科学会；岡田、未発表）。

発生学的研究

複雑な脳の形態は、発生初期の単純な中空構造の神経管を構成する細胞が増殖、分化、移動、細胞形態変化を行うことでつくられていきます。脳の発生過程に関わる分子が、これまでに数多く同定されてきました。我々の研究グループでは、その中でDab1遺伝子や、我々自身でこれまでに同定してきた分子（Baba et al., 2006; Takano et al., 2011）についてその機能を調べることで、脳の形態形成機構の一部を明らかにする努力をしています。現在は２つ系統の変異マウスを作製し発生学的異常を明らかにすることで、分子機能の解明を試みています。

（１）大脳皮質が（ほとんど）無い変異マウス

このマウスの胎生期に大脳皮質を観察すると神経幹細胞（赤）と分化を始めたニューロン（緑）が入り交じっていることが分かる。この変異マウスでは発生初期にニューロン分化が亢進し幹細胞が枯渇して、結果的に大脳皮質が小さくなるのではないかと考えられる(今井ら 未発表)。

（２）大脳皮質細胞構築が壊れたマウス

in situ hybridizationによって各層を構成するニューロンを検出し、異なった色で示した (紫：２、３層；緑４層、赤：５層；青：６層)。大脳皮質の体性感覚野どうしを比較している。変異マウスの大脳皮質では明瞭な層は観察されず、本来各層を形成するべきニューロンが分散している (Dekimoto et al., 2010)。

この様な細胞構築異常が、発生過程のどのような変化によって形成されるかを調べています。

（３）脳形態形成過程の観察

正常な脳の形態形成過程は実のところ、十分に理解されている訳ではありません。我々は神経幹細胞、神経前駆細胞や分化中のニューロンの挙動を分子発現などを指標に調べることで脳形態形成過程を研究しています。

海馬体発生

大脳新皮質の発生に較べて海馬体の形態形成過程は複雑です。これまでに海馬歯状回神経幹細胞が下顆粒細胞帯に配置される過程の観察を行いました（Sugiyama et al., 2013 下図）

海馬体は歯状回（下図、青）、CA1（緑）,CA3（赤）、海馬台と言った領域に組織学的にも生理学・神経回路的にも区別することができます。それらの領域はどれも発生初期には前脳正中側神経上皮から分化してきますが、複雑な形態形成過程を経て、異なる構造へと発生します。この領域ごとの組織学的違いをつくる形態形成過程を調べています(Sugiyama et al., in preparation)

行動学的研究

上記のような大脳皮質の形態的特徴の脳機能における重要性は不明です。精神疾患患者の大脳皮質で形態的異常は古くから報告されていますが、それが疾患の症状と関係があるかどうかはわかっていません。我々は行動実験を行って、それら変異マウスの脳における形態異常によって生じる行動異常から、脳形態異常と脳機能との関係を調べています（Imai et al., in preparation）

勝山グループの写真

2014

2013

2012

2012

2008 @ 神戸大学