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自閉症スペクトラムの病態基盤の解明

自閉スペクトラム症Autism spectrum disorder (ASD)は、社会性の欠如、言語的・非言語的コミュニケーション障害、行動および興味の限局等を主症状とする発達障害の1つです。アメリカ疾患予防管理センターが実施している調査によると、近年、ASD患者数が増加傾向にあることが報告されています(2018年時点で約59人に1人) (Baio et al., 2018)。この主な原因として、診断基準の変更や社会的認知の向上などによる”見かけ上の”患者数の増加が指摘されています。しかしながらその一方で、両親の高齢化が患者数の増加に寄与する可能性も指摘されており (Modabbernia et al., 2017)、私たちを取り巻く環境の変化によってASDの発症数自体が増加している可能性も考えられます。

ASD患者数

私たちの研究グループでは、父親の高齢はどのようにして子孫のASD発症リスクとなるのか?について研究を行っています。この問いに答えるために、私たちはマウスを用いて父親の高齢による子孫のASD発症リスクをモデル化し、子孫マウスにおける様々な行動学的解析を行ってきました (Yoshizaki et al., 2019)。最近は、マウス母子間のコミュニケーションに重要であると考えられている超音波発声ultrasonic vocalization(USV)に着目して、父親マウスの加齢が子孫マウスのUSVの発達にどのような影響を及ぼすのか検討しています。

マウスの発するUSVのsyllable(菅野博士@鹿児島大より)

また、高齢マウス精子には多数のエピゲノム変化が生じていることを見出しており (https://www.biorxiv.org/content/10.1101/550095v1)、これらの精子エピゲノム変化の成立機構や子孫の遺伝子発現への影響についても現在検討を行っています。

父親の加齢による子孫の発達異常の分子機構
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