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グリア細胞の機能

アストロサイトのミトコンドリア活性の解析

アストロサイトは脳におけるグリア細胞の一種で、ニューロンと同数かそれ以上の数が存在すると言われています。これまで、アストロサイトはニューロンへの栄養の供給や細胞の支持など、脳機能において補助的な機能を担っているとされてきました。しかし近年、ニューロンの活性やシナプス伝達効率の制御など、脳機能においてアストロサイトがより積極的な役割を果たしていることが明らかになってきています。アラキドン酸やドコサヘキサエン酸といった多価不飽和脂肪酸は脳機能の改善に効果があることが報告されてきましたが、その作用メカニズムは未だ不明の点が多くあります。

私達の研究室では、アストロサイトのミトコンドリア機能に着目し、特に多価不飽和脂肪酸がアストロサイトの機能に与える影響について研究をしています。マウス新生仔の脳から調製されたアストロサイトにおいて、グルコースを主なエネルギー源として与えられた場合、オス由来アストロサイトのミトコンドリア活性が、メス由来アストロサイトのミトコンドリア活性よりも有意に高いことを見出しました(図1)。このことは、脳でのエネルギー代謝において雌雄差が存在することを示唆しています。

図1

図1 細胞外フラックスアナライザーを使用したミトコンドリア活性の測定。
2つのグルコース濃度(Hight, 15 mMまたはLow, 5 mM)で、雌雄を分けて測定した。

また従来、脳はグルコースを主なエネルギー源として使用しており、脂肪酸のエネルギー源としての寄与(β酸化)は少ないことが報告されてきました。しかし、培養アストロサイトにおいてパルミチン酸(PA)をエネルギー源として添加した場合、ミトコンドリアにおける高いβ酸化活性が観察されました(図2)。このことより、少なくともマウス培養アストロサイトでは潜在的なβ酸化活性が存在することが明らかになりました。アラキドン酸(ARA)やドコサヘキサエン酸(DHA)を添加した場合、β酸化による酸素消費量は上昇しましたが、パルミチン酸添加時半分ほどでした(図2)。

図2

図2 培養アストロサイトのミトコンドリアはβ酸化活性を示す。

今後、アラキドン酸やドコサヘキサエン酸添加によるミトコンドリア活性の上昇がどのような分子メカニズムで生じているか解明したいと考えています。また、取り込んだ脂肪酸をミトコンドリアへ輸送するために必要な細胞内の脂肪酸結合タンパク質(Fatty Acid Binding Protein, FABP)の、ミトコンドリアのβ酸化における役割を明らかにしたいと考えています(図3)。

図3

図3 細胞内のエネルギー産生経路
(細胞質での解糖系とミトコンドリア内のTCA回路〜酸化的リン酸化経路)

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