HOME > 研究内容 > 大隅グループ > 転写制御因子Pax6の新たな機能

転写制御因子Pax6の新たな機能

生後脳におけるPax6の役割

Pax6は脳の初期発生において神経幹細胞で強い発現が観察されますが、生後の脳においてもアストロサイトや一部のニューロンにおいて発現が維持されています。Pax6変異体のホモ接合体は出生致死のため、生後の脳の発達におけるPax6の役割は未だ不明な点が多く残っています。

私達の研究室では、生後脳におけるPax6の役割を解明するため、Pax6のコンディショナルノックアウトを可能とするPax6-floxedマウスと、細胞・時期特異的なPax6の欠損を誘導できるドライバCreマウスと交配させることで、出生後も生存可能なPax6欠損変異体を作成しました。

作成した系統の1つであるhGFAP-Cre;Pax6-floxedマウス(Pax6cKOマウス)では、顕著な生育阻害や運動失調が観察され(図1)、Pax6が脳の発生・発達のみならず、生後の脳機能においても重要な役割を果たしていることが示唆されています。

図1

図1 生後30日目のPax6cKOマウスと健常な同腹のマウス(Control)。
Controlマウスに比べてPax6cKOマウスの体は小さい。

また、脳の解剖学的所見では側脳室の拡大と小脳の形成異常が観察され(図2)、Pax6が胎児期のみならず出生後の脳の発達にも重要であることが示唆されました。

図2

図2 Pax6cKOマウスの脳の外観と解剖学的所見。

特に、脳脊髄液の恒常性維持に重要とされる交連下器官(SCO)においてPax6の強い発現とCreの活性が観察されたことから(図3)、Pax6cKOマウスで観察された側脳室の拡大は、交連下器官の異常によって脳脊髄液の恒常性が破綻した結果である可能性が明らかになりました。

図3

図2 交連下器官(SCO)におけるPax6(赤)の発現とCreの活性(緑)。

現在、Pax6の欠損が交連下器官どの様に影響しているのか解析しています。

ページの先頭に戻る